そば打ちとはまたけっこうなご趣味で
鳥取砂丘を見に出かけた途中の小さな町、以前この町のタウン紙で紹介されていた手打蕎麦の店を初めて訪れた。暖簾をくぐっても「いらっしゃいませ」の声がない。おや、昼の1時すぎなのにもう売切れたのか、と思いきや、
「3人だったらこっち座って」
とオヤジの声。なんだ、やってるなら挨拶ぐらいしろよ。さてメニューだが、蕎麦に専念した姿勢は期待がもてる…が、少し高い。最低でもざる800円、ほとんどが千円以上するのか…、なるほど、だから店名が『代千』かあ!。こりゃあ一本取られたね。おこわのおかわりができるセットは1,200円、これにするか。
大きなカウンターの向うでオヤジがそばをゆで始める、全部丸見えだ。「ゆで具合の好みありますかあ」ときた。おお、硬めがいいねえ、と陽気に答えたが返事がない。聞こえてるのかなあ、黙ってやってるから放っておこう。
ざる蕎麦が来た。うーん!こりゃいい蕎麦だ。限りなく一流に近いのど越しと香り。でも薬味はちょっといただけないぞ、おろしは辛味大根じゃなきゃ、ねぎもしおれてるしなあ。けど蕎麦自体はたいしたもんだ。おばちゃんがおこわを運んできた。と、そのとき店主の口から驚くべきひと言が!
「おこわ出しますけど、蕎麦を先に食べちゃってください。」
でもすでに私の箸にはおこわが…、えいとりあえずひと口は食べよう。するとさらに追打ちをかける店主の言葉、
「蕎麦はね、出して1分でだめになりはじめるんだッ!。早く食べなきゃ。」
ふえーい(泣)、えろうすんまへん。急いで蕎麦食べますわあ。ズッズッズッーと、ふーうまかった、かな?。おこわは落着いて食べよう。ありゃこれまたうまいでないの。大食いの息子はおかわりします。ええっあと1杯でおこわおしまいだって。ラッキーだったなあ息子よ。
ところがそのとき折悪しく入ってきた新客が、
「セットある?」
『ごめんな、今俺らが頼んだので最後やねん。』
と思いきや、おばちゃんもとんでもないことを口走るのだ。
「こちらにおかわりやめていただいたら出来るんですけど…。」
おいおい、そりゃないやろ。先に注文しとるんやから。客同士でケンカして決めろっていうのか。せっかくの楽しみのおかわりが気分悪いったらないね。
その上、メニューにある鴨南蛮を頼んだ客に
「温かいのはできませんよ、おつゆが切れたから。いやだから天ぷら蕎麦もだめなんだって、おつゆが切れたんだって言ってるじゃない。」
って何でお前、そっくりかえって自慢するんだ。まず謝れよ。
これがもし物産展やなんかで地元で名のある蕎麦の製麺所が臨時で出してる屋台なら、「おやっさんのそばはいつも最高だね」と絶賛の蕎麦だろう。しかしここはちゃんとした店だろう。
自分の蕎麦打ちの腕を見せたいだけなら金とるな。ボランティアでやれ。
※編集部註:「しかし先生、東京のそば屋やすし屋の名店ではこんな感じの名物おやじが人気ですけどねえ。」「ばかもの、だから関東のやつらは田舎者だというのだ。客に気を使わせておいて何のプロだ。店は食べるためだけに行くのではないぞ。」「田舎者って…先生が東京の人にそんなこと言えるんですか。」「なにい!中川、わしの郷里をぐろうするか、言うに事欠いて『シガサク』とはなんだ『シガサク』とは!。」「いや私はなにもそんな…、うわあっ!、おゆるされませ、おゆるされませ」「やるまいぞ、やるまいぞ、…」
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