演歌にご注意、オモニの“ぼったくり唱法”。

 最近はどうも女房の帰りが遅い。といっても浮気ではないぞ。出向先の某プロダクションにて、こき使われておるのだ。今夜も遅い時間とあいなったため、中間地点で合流し、夫婦で一杯飲んで帰宅することにした。バカ息子もどうせ帰っては来るまい。
  東天満交差点近くに「韓国居酒屋」の看板を発見、敷居が低そうでうまいものがありそうに思えた。引戸を開けるとカウンターの中には誰もおらず、客なのか従業員なのかわからんオモニが二人でカラオケ本を開いているのみ。
「あっ、いいんですかね」と一瞬躊躇すると、エプロン姿のオモニがサッと立ち、「どぞどぞ、イラシャイマセ」と満面笑を浮かべてカウンターの中に入った。この人がおかみさんか。

 とりあえず生ビールといくつかの食べ物を注文しとこう。すぐに出てきたどっさり盛りのキムチ、乳酸醗酵の味も濃い本場物だ。次に豚足、これまた「これで500円かよ」と思わず顔がほころぶボリュームで、しっかりしたものだ。そしてチジミ(950円)、大判に焼かれたそれはサクッとした周囲としっとりした中味の対比が味わえる見事なものである。アテはもうこれで充分だ。ビールを飲み干した私たちはジンロ(韓国焼酎)を注文し、ロックでちびちびやりながら韓国料理を楽しんでおった。ところが…

♪ダダダダ〜ン…♪

 いきなり流れ出すど演歌イントロ、いきなりカラオケタイムかよ!思わず豚足がのどにつっかえるところだぞ。さっきからカウンターにいたオモニが歌い出す。情感たっぷりのディレイ唱法(出だしをわざと遅らせるタメのきいた歌い方)、とても食事のBGMにはならない。二番はカウンターの中からおかみさんが…

♪アレッノッ イトヨンニッ ヒッ ハレノシテーエ〜エエン♪

 これまた小林幸子ばりの裏返りこぶし唱法(地声で歌いながらこぶしだけファルセットを使うクサイ歌い方)で泣叫ぶ。おまけに二人とも日本語の歌詞が全く読めてない。歌詞なんかどうでもいいってノリで情感入りまくりの濃いこと熱いこと、チゲ鍋とサムゲタンをいっしょに食っているみたいだ。

 ふう、やっと終った、他に客もいないし拍手するしかない。するとまた満面に笑みを浮べたおかみさん、「オニイサン歌って」と歌本を押し付ける。「いやいや私は…」と辞退するが、またもや歌本を繰り始めているオモニを不安げに見ていた女房はおかみさんに気を使ったのか、何か歌ったほうが良いと言い出した。 「そうや、今度職場でカラオケ行くから、あれ教えてえな、中島みゆきのプロジェクトX」 「ああ『地上の星』やな。わかったわかった教えたるからあんた歌いや。」
  てな具合にとうとうカラオケ宴会になだれこんでしまった。こうなると私も黙ってはおれまい。実はこの海原、以前の職場では『演歌の帝王』として宴会の花形だった男。「みちのくひとり旅」、「サチコ」、調子に乗って十八番の「哀愁トゥナイト」までアクション入りで披露する。女房も都はるみまでうなって無理やりテンションを上げる。

♪あんこーだよりンはアン…♪

「オフタリ、ウタウマイ!、サイコウヤネ」
  オモニもおかみさんも大喜びでノリノリだ。よかったよかった『郷に入れば郷に従え』ともいう、歌っている人がいるのに冷たく白けているのは礼儀に欠けるものなあ。さてそろそろ帰ろうか、勘定しておくれ。

「ハイ、ナナセンサンビャクエン」

  はてな?どう考えても5000円以内のはず。歌の代金か?しかし一曲100円としてもだなあ…、あっひょっとしてオモニとおかみさんの歌った分も入っているのか、ううむ。どうも釈然としなかったが、カラオケスナックで二人でこれだけ飲んで歌ったら一万円は下るまい、こんな料理も食べられまいと考え、おとなしく支払って帰った。しかしやはりこれはある種のぼったくり商法であろう。
 おそるべきオモニ達だ。ただ飲み食いするためだけに行っても、あの“満面の笑み”にほだされ、いたたまれずにサービス精神を発揮してしまう、そんな民族気質をよくわかっているのか。『太陽政策』もかくや、と思われるあっぱれな営業ぶりであろう。

※編集部註:
「へー先生は演歌もご堪能なのですか。」
「あたりまえだ。演歌こそ民族の心の歌、我々のブルースは演歌なのだ。アフリカ系アメリカ人の楽曲など、単なる猿まねに過ぎぬ。」
「しかし演歌って韓民族の民謡が源流なのでは。日本古来の音楽じゃないですよ。」
「 誰が大和民族の歌などと言った。だいたいが大和朝廷からして渡来人だ。むしろあっちが本家本元なのだよ。」
「なら別にいいじゃありませんか、日韓演歌合戦で。7,000円ぐらいせこいこと言いなさんなって。『スカドッグ』なんて下手なスライドギター弾いてるヤツよりも」

「バカものが! スカさんに失礼なことを言うな。まあ彼程度ではワシとはレベルが違いすぎるがなフフフ。 おおだから言うのだ。この海原に三曲も歌わせておいてカラオケ料を請求するとは失礼千万!むしろギャラを払え、ギャラを。

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