演歌にご注意、オモニの“ぼったくり唱法”。 最近はどうも女房の帰りが遅い。といっても浮気ではないぞ。出向先の某プロダクションにて、こき使われておるのだ。今夜も遅い時間とあいなったため、中間地点で合流し、夫婦で一杯飲んで帰宅することにした。バカ息子もどうせ帰っては来るまい。 とりあえず生ビールといくつかの食べ物を注文しとこう。すぐに出てきたどっさり盛りのキムチ、乳酸醗酵の味も濃い本場物だ。次に豚足、これまた「これで500円かよ」と思わず顔がほころぶボリュームで、しっかりしたものだ。そしてチジミ(950円)、大判に焼かれたそれはサクッとした周囲としっとりした中味の対比が味わえる見事なものである。アテはもうこれで充分だ。ビールを飲み干した私たちはジンロ(韓国焼酎)を注文し、ロックでちびちびやりながら韓国料理を楽しんでおった。ところが… ♪ダダダダ〜ン…♪ いきなり流れ出すど演歌イントロ、いきなりカラオケタイムかよ!思わず豚足がのどにつっかえるところだぞ。さっきからカウンターにいたオモニが歌い出す。情感たっぷりのディレイ唱法(出だしをわざと遅らせるタメのきいた歌い方)、とても食事のBGMにはならない。二番はカウンターの中からおかみさんが… ♪アレッノッ イトヨンニッ ヒッ ハレノシテーエ〜エエン♪ これまた小林幸子ばりの裏返りこぶし唱法(地声で歌いながらこぶしだけファルセットを使うクサイ歌い方)で泣叫ぶ。おまけに二人とも日本語の歌詞が全く読めてない。歌詞なんかどうでもいいってノリで情感入りまくりの濃いこと熱いこと、チゲ鍋とサムゲタンをいっしょに食っているみたいだ。 ふう、やっと終った、他に客もいないし拍手するしかない。するとまた満面に笑みを浮べたおかみさん、「オニイサン歌って」と歌本を押し付ける。「いやいや私は…」と辞退するが、またもや歌本を繰り始めているオモニを不安げに見ていた女房はおかみさんに気を使ったのか、何か歌ったほうが良いと言い出した。
「そうや、今度職場でカラオケ行くから、あれ教えてえな、中島みゆきのプロジェクトX」 「ああ『地上の星』やな。わかったわかった教えたるからあんた歌いや。」 ♪あんこーだよりンはアン…♪ 「オフタリ、ウタウマイ!、サイコウヤネ」 「ハイ、ナナセンサンビャクエン」 はてな?どう考えても5000円以内のはず。歌の代金か?しかし一曲100円としてもだなあ…、あっひょっとしてオモニとおかみさんの歌った分も入っているのか、ううむ。どうも釈然としなかったが、カラオケスナックで二人でこれだけ飲んで歌ったら一万円は下るまい、こんな料理も食べられまいと考え、おとなしく支払って帰った。しかしやはりこれはある種のぼったくり商法であろう。
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