注文の通らない料理店・寿司編。

 ベルパーク近くの大通りに面して、今年オープンしたこの寿司屋。まずまず新鮮だし、珍しいネタもある。店はきれい(新しいからね)だし、値段もやや安い方だ。ところが驚くなかれ、この一見こましな寿司屋こそ、かの宮沢ゲンジでおなじみ、幻の『注文の通 らない料理店』だったのである。

 例えば「たこ」を握ってくれと注文してみよ。「あいよ!」と二人が威勢の良い返事、これで安心してはおらぬ か。愚か者め!、この寿司屋をなんと心得る。南町奉行・遠山左衛門掾なるぞ(そんなわけはない)。そんな素人注文では明日になってもなにも食えんわ。見ておれ、待てど暮せど「たこ」なぞ来んわ。おお、他の料理が一段落したようすの板前がこっちを向いた。やっとこさ気がついたか。
  ところがこの後板前の口からとんでもないひと言が…!
 「えーと、こちらさん何か握りましょうか?」。
 うーむ、この海原にしてこの店を侮っておった。それにおばちゃんに言ったビールのおかわりも来ないではないか。ここまでとはあっぱれじゃ。

 ではこの店での注文方法を指南してしんぜよう。板前がヒラメをケースからとりだした。今だ!「僕にもそれ握って」。見よ、間違いなく即座にヒラメをゲットだ(あたりまえじゃん)。この手順で誰かの注文に相乗りすれば良いのだ。間違っても注文と同時に『僕も…』と言うなよ。板前がとりかかってからでないと意味がないのだ。

 諸君、かようにこの店では注意力と気配り、素早さが必要とされるのだ。そのうえ忍耐力を養うにはもってこいであろう。そう、『達人の店』という看板に偽りなし!、板前が達人ではなーい、客の達人のみが注文を許される店なのであーる。

※後日譚(編集部註):さて出るか。なに、エビサラダ巻とハマチにぎりを注文したままだと?そんなことを気にしておったらここから出れんぞ。お茶を飲んであきらめるのじゃ、『エビも四つ足、お茶も四つ足』。

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